「メタボ」にも「偽」の疑惑?

アメリカはボストン在住の李啓充医師の書かれた記事で面白いのがあったので紹介します。

続 アメリカ医療の光と影  第119回 Fat or Fit
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2008dir/n2765dir/n2765_03.htm
第2765号 2008年1月21日

この中で、サウス・カロライナ大学のブレアらが2007年12月5日号のJAMAに報告した論文を紹介しています。60歳以上の高齢者約2600人を平均12年追跡調査し,脂肪蓄積(肥満)及び体力が,(全死因による)死亡率に寄与する度合いを調べたものです。

この研究結果から見えてくる事実として、以下のことが書かれています。

脂肪蓄積,体力と死亡率の驚くべき関係

 ブレアらは,脂肪蓄積と体力と,それぞれの因子がどの程度死亡率に寄与するかを分析した。なぜなら,太っている人・やせている人それぞれに体力のある人・ない人がいるので,「いっしょくた」にしたまとめ方では,脂肪蓄積と体力と,どちらがどれだけ重要か,あるいは,それぞれが独立に死亡率増加に寄与するのか,それとも一方が他方に依存するのかは,わからないからである。そこで,ブレアらは脂肪蓄積と体力と,一方の死亡率に対する寄与度を他方で補正したのだが,その結果は驚くべきものだった。

 まず,体力が死亡率に寄与する度合いは,脂肪蓄積による補正を加えても,まったく影響を受けなかった(ここでは腹囲による補正だけを示したが,BMIによる補正もまったく影響を与えなかった)。一方,脂肪蓄積が死亡率に寄与する度合いを体力で補正したところ,その効果は消えてしまった。平たく言うと,太っている人でもやせている人でも,体力が劣るほど死亡率が高くなることに変わりはなかったのだが,対照的に,太っている人でも体力があれば死亡率は低いし,やせている人でも体力がなければ死亡率が高いことがわかったのである。

減量よりも体力増強

 これまで,私たちは,患者の「体重を減らす」ことに躍起となってきた。それなのに,この論文は,「(60歳以上の高齢者の死亡率に限って言えば)体重を減らすことよりも体力をつけることをめざすべきだ」と示唆しているのだから,ショッキングだった。誇張となる危険を承知で敢えて言い換えると,「患者がfatであるかどうかよりも,fitであるかどうかの方が重要だ」と言っているのである。

大変革への危惧

 さらに,この論文の結論が示唆するところの健康政策上の意味合いを考えるとそのインパクトは大きい。最近,「メタボリック症候群」対策に焦点を絞って医療制度に大変革を加えようとしている国があるそうだが,そんな「手間暇お金」をかけるやり方よりも,国民に運動を奨励する効果的な方法を工夫するほうがはるかに賢いかもしれないからである。

 周知のように,アメリカ糖尿病学会もヨーロッパ糖尿病学会も,メタボリック症候群の概念そのものに対して否定的であるだけでなく,「診断名として使ってはならない」とする立場を取っている。「(たとえば肥満とか体力とか)基本的なところを何もわかっていないのだから,すべてわかったつもりになってはいけない」と,自らを戒めることを忘れまいとする者の目から見ると,メタボリック症候群「一本」に絞って制度を大変革しようとするやり方に対しては,「なんと大胆なことをするのだろう」と思えてならないのである。

ここで書かれている「大胆な国」とは、勿論「日本」を皮肉った言い方であります。
「健康な老後を送るためには、メタボ対策より体力増強、運動療法」がワールド・スタンダードになったら日本はいい笑い者になるでしょうね。
そう言えば、長寿日本一の長野県は、ここで言う運動を奨励することで県民の体力を増強して、その座に着いたのではなかったか?
「ピンピン、ころり」でしたっけ?あんまり好きな言葉ではないけれど。

自分がメタボ体型であることの良い言い訳が出来たと変な安心をしないで、日頃の運動不足をちゃんと解消せねば!と思った訳であります。
人間、見た目って言うのもありますからね。
と言いつつ、部屋のテレビ台の下に眠っている「ビリーズ・ブート・キャンプ」・・・・