「ポイント・オブ・ノーリターン」日歯メルマガ 08/02/11より

■大久保会長コラム「会意」

 ポイント・オブ・ノーリターン

 今年は、新年早々から、米国のサブプライムローン問題の世界経済に与える
ダメージが露になりました。これが、米国の経済を、きわどい綱渡りのように
支えてきたドルの国際基軸通貨の終焉を意味するのか、各国、とりわけ我が国
は、固唾を呑んで見守っている状況にあります。

 また、内を省みれば、これも新年の報道ですが、我が国の経済力も学力も、
そして科学力も国際比較の中で低下するなど、総合的な国力の低下は、深刻な
課題であり、これに真剣に取り組まなければ、後がないのではという危機感が
あります。

 以上に述べた問題は、実は、ずっと以前から指摘されてきたことです。した
がって、人間は眼前に危機が見えない限り動き出すことは困難だという、過去
から繰り返されてきた経験則を確認しているに過ぎないのかもしれません。

 こんなことを、新年に考えている時に頭に浮かんだ言葉がありました。それ
が、タイトルとして示した「ポイント・オブ・ノーリターン」です。適切な日
本語訳があるのかどうか分かりませんが、「回帰不能」とでも言うのでしょ
うか。要するに、「もう元に戻ることができなくなる一点」のことです。

 現在から過去を振り返った時、「あそこが戻れなくなる点だった」という指
摘は、容易にできます。しかし、目の前で起こりつつある出来事で、その一点
を確認することは、とても困難だと思います。

 厳しい交渉の最中に、これ以上踏み込んだら決裂するという回帰不能点は、
必ずどこかにあります。しかし、交渉の熱い議論の只中にいる人間にとって、
その一点を冷静に見つめることは理解していても、それを常に念頭に置き続け
る余裕はありません。したがって、交渉している人間とは少し距離を置いた場
所で、その一点がどこかを探り続ける役割を持つ人間が必要になります

 では、そこなら一点を見定めることが可能かと言ったら、それもまた困難な
課題を負っています。なぜなら、少し離れた位置にあるということは、その交
渉が及ぼす外部への、あるいは未来への影響、つまり現場での判断を超えた、
より政治的な決断をも考慮に入れる必要が生じてくるからです。

 このように考えると、「ポイント・オブ・ノーリターン」を見定めることは
極めて難しいことですが、大事なことは、「自覚せずに気が付いたら一点を踏
み越えていた」ということのないようにしなければなりません。

 翻って考えれば、我が国の歯科医療は、まだ辛うじて回帰不能点の前で踏み
とどまっていると思いますが、常にそれを見定めることだけは神経を張り巡ら
せていなければならないと自らに言い聞かせています。

■7地区制への見直し代議員会に提案へ
 第11回理事会

 第11回理事会が1月24日、新歯科医師会館で開催され、日歯の機構改革の一
環として、現行の10地区制から7地区制への見直しに関し、3月13日、14日の両
日に開催される第160回代議員会での協議事項に提案することを決定
した。

 また、定款等の改正として、定款等改正臨時委員会より近日中に提出される
予定
である、裁定に関する諸問題への考えを取りまとめた「中間答申」を受け
て、次回理事会で日歯としての考え方を決め、第160回代議員会の協議事項と
して提案することを確認した。

■個人情報の取扱いに慎重姿勢 レセプト活用検討会報告書案

 医療費適正化計画の作成等に資するため、国がレセプト及び特定健診データ
を収集・分析する際のあり方を記した報告書案が1月30日、厚労省内で開催さ
れた「医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報等の活用に関する検討
会」でまとまった。

 報告書案では、医療機関コードの収集など、個人情報の漏洩等のセキュリテ
ィ対策や取扱いに慎重を期す
姿勢を明記している。

 今後は、平成20年度にレセプトデータ及び特定健診等データの収集・分析体
制を構築し、平成21年度に収集・分析を開始
する予定。