平成20年度診療報酬改定について(報告)


日本歯科医師会会員 各 位
社団法人日本歯科医師会
会 長  大久保 満男

平成20年度診療報酬改定について(報告)

 謹啓 時下ますますご清祥にてお過ごしのこととお慶び申し上げます。
 
 会員の皆様におかれましては、平素より本会会務にご支援・ご尽力を賜り心
より感謝申し上げます。

 さて、去る2月13日に開催された中央社会保険医療協議会中医協)総会に
おいて、平成20年度診療報酬改定における答申がなされ、即日、厚生労働大臣
に手渡されました。

 本執行部は、過去3回連続したマイナス改定、とりわけ前回改定における歯
科医学的根拠および臨床現場の実態に対する認識を欠いた理不尽、不合理な内
容により、我が国の歯科医療は崩壊寸前の危機にあることを強く認識し、その
回復に努めることを最大の使命として、今回の改定に臨んでまいりました。

 改定率につきましては、都道府県歯科医師会、日本歯科医師連盟および各県
歯科医師連盟の関係者、そして石井みどり議員をはじめとする歯科関係国会議
員、さらに自民党国会議員のご理解ご尽力のお陰をもちまして、引き上げ率は
僅かではありますが、困難であるといわれたプラス改定を実現することができ
ました。

 それを受けて、我々は作戦本部として設置した診療報酬改定対策本部におい
て、改定項目の点数貼り付けや運用面での取扱い等の具体的検討を20数回に及
ぶ会議の中で重ね、さらに中医協厚労省との打合せに臨む中医協歯科代表委
員をバックアップするチームを結成し、連日の作業に加えて、今月に入り一日
12時間にも及ぶ作業を3日にわたって開催する等、可能な限り万全の体制をと
って対処してまいりました。

 今改定の主な内容は、指導管理体系が「歯科疾患管理料」として一本化され
ますが、会員の皆様が円滑にこの体系に移行できるように十分に準備を進めて
まいります。また、念願の初・再診料の引き上げ、文書提供の簡素化(3ヶ月
に1回)、齲蝕処置(前の普処)の全面復活、一歯単位の歯周外科手術の復活、
再度の歯周基本治療の評価および継続的な歯周治療体系の導入、さらに支台築
造印象、テンポラリークラウン等の新規導入等が実施され、何とか前回改定の
改善に向け一歩前進することができたと思っております。

 しかし、プラス改定とはいえ0.42%という僅かな枠組みの中での点数貼り付
け作業は大変に厳しく、新たな評価を得るためには既存の項目の合理化は避け
ることができず、ラバーダム防湿法や歯肉息肉除去、充填等の一体化を苦渋の
選択として受け入れざるを得ませんでした。
したがって、我々が望む歯科技術
料の適切な評価を得るには、まだまだ困難な道のりが残されており、今後、執
行部一丸となり事態打開に向けた不断の対応を行ってまいる所存です。

 今改定の内容が円滑に臨床に反映するように最後まで全力を挙げて努力して
まいりますので、何卒ご理解ご協力をよろしくお願い申し上げます。

謹白
(日歯メルマガ No.45 より)

そして、もうひとつ改定に関する記事です。


歯科部会長談話 「今次改定 保険医の『裁量権』侵害」 

神奈川県保険医協会

歯科部会長  馬場 一郎

 
 厚労省の諮問を受け、2月13日に中医協が答申を行った。答申を見る限り今次歯科改定の狙いは、「歯科疾患管理料」新設による強引な患者長期管理への誘導、点数包括化による2011年「レセプトオンライン請求義務化」へ向けた道筋作り―ということが透けて見える。今次改定は、歯科保険診療の選択肢を狭める、すなわち「歯科保険医の裁量権の侵害」に直結すると言わざるを得ない。

 我々歯科保険医は患者の口腔内の状況・疾患に応じて治療計画を立て、個々の患者に対する治療や指導を行う。一口腔単位で患者の口腔内を管理することは重要であるが、例えば「歯周病」と「う蝕」では治療内容も管理方法も全く異なる。それにも関わらず、一律に「歯科疾患管理料」へ一本化する今回の改定は、歯科医療現場の実態を無視したものと言える。

 今次改定では初・再診料や処置・手術・歯冠修復の点数などが若干引き上がり、新技術も保険導入されるのはほぼ確実なものとなっている。しかし初・再診料引き上げの財源はラバー加算と歯肉息肉除去術を廃止した分で充当されていることが伺える。基本診療料引き上げ分に特掲診療料の廃止分を充てるようなやり方は、本末転倒と言わざるを得ない。

 さらに、患者管理の「入り口」となる「歯科疾患管理料」の算定要件が現状の「歯科疾患総合指導料」のような―実態にそぐわない無理難題を押し付けるような―ものでは、とても容認できるものではない。「歯科疾患管理料」の算定要件が厳しければ、「歯科疾患総合指導料」同様、算定そのものが極めて困難になるし、算定できたとしても、その後の治療・管理において何らかの制限が加わる可能性も否定できない。

 また、忘れてはならないのが、改訂された「歯周病治療」「有床義歯」の両ガイドラインが今次改定に反映されていることである。答申では、歯周病メインテナンスは最長3年間、有床義歯の長期管理は最長1年間となっている。この「期間」と「歯科疾患管理料」の算定要件がどう絡んでくるのかも今次改定内容を左右するだろう。

 改めて説明するまでもなく、過去3回のマイナス改定で、歯科保険医療機関の経営は厳しく、すでに限界を超えている。追い討ちをかけるように今次改定も実質マイナス改定(▲0.82%)となっており、4回連続マイナス改定で、さらなる歯科医療崩壊が加速しかねない。歯科保険医として今次改定も到底受け入れられるものではない。

 今次改定に限らず、これまでの歯科診療報酬体系は「国民の視点」に立っていなかった。本来医療とは国民のためのものだ。よって、政府が推し進めている「社会保障費縮減」という名目の医療費削減を断じて許すことはできない。

 今回の中医協答申で、今次改定の全てが明らかになったわけではない。しかし、歯科保険医にとって、厳しい改定内容になることはほぼ間違いない。改定直後は大幅な収入ダウンにはならなくても、治療が長期に渡った場合には、様々な制限が加わり、急激に収入がマイナスに転じる―ということも予想される。

 今後は、3月上旬に出される告示・通知を踏まえ、歯科部会として改善要求を行い、歯科診療報酬体系を患者の視点に立った本来の「あるべき姿」に戻す運動を展開していきたいと考えている。

2008年2月21日
 
http://www.iiiryou.com/top/h/post_412.html


・・・・・だそうです

同じ診療報酬改定に関しての現時点での総括ですが、現実を見ているのはどちらでしょう?

因みに、神奈川保険医協会の歯科部会長、馬場一郎先生は、TBSの「噂の!東京マガジン」の番組に出て、コメントしていた先生です。