平成20年度診療報酬改定に見る 後期高齢者歯科医療



 歯科医療の最大の問題の一つである需給問題は一向に解決の兆しはなく、患者数の減少と診療報酬の減少化は歯科医院の経営を圧迫し、まさに歯科医療崩壊の寸前にある。歯科診療所1日あたりの収入は来院患者数と一件あたりの治療費の積であるが、歯科は一件あたりの診療費が他科に比べると高い。だが、患者数が少ないため、歯科診療所の収入は最低である。従って、会員の念願である診療報酬点数の動向は最大の関心事となる。

 歯科需要を新しく開拓する余地は高齢者の訪問歯科診療をおいて無いとするならば、特に後期高齢者医療制度における点数設定は、今後の歯科の明暗を分けると言っても過言ではない。この度の在宅療養支援歯科診療所の創設は、後期高齢者の療養を歯科医療の面から、その機能の評価をする観点から新設されたものである。これは医科の在宅療養支援診療所の後追いで、その施設基準が厳しく全国でも1万件程度の普及でしかない。歯科の施設基準は可能な限り多くの歯科医が参加できるものでなくてはならない。これには4項目の施設基準が決められているが、要因に関しては「所定の研修を受講した歯科医師が1名以上配置されていること、歯科衛生士が1名以上配置されていること」とされている。しかし、所定の研修については昨年の厚労省案によると講義を中心とした研修が2日、演習を中心にした研修が1日の3日程度とも言われているが、その詳細は公表されていない。昨年の社保審の特別部会における総合医に関して医師会は「登録制度」反対で、結局は患者自らの選択を通じて決定することになり、総合的に診る取り組みの前段階と位置づけている。歯科においては「研修」による歯科版登録制度でないことを願っている。

 この度は老人訪問口腔指導管理料430点を廃止し、後期高齢者在宅療養口腔機能管理料180点を新設した。ここには「歯科疾患及び口腔機能の管理計画を作成し、患者または家族に文書により提供した場合に算定する」と記載されている。現行の歯科訪問診療に関わる算定要件の情報提供は無くなったのに、後期高齢者に関しては算定要件とされている。口腔機能管理の狙いは誤嚥性肺炎を予防するために摂食・嚥下機能を充実させる意味合いを持っており、所謂口腔ケアの推進を行う視点からの評価だと考えて良いのだろう。さらに、おかしいのは歯科訪問診療に初診、再診料が無くなってしまったことではないか。後期高齢者に関するその他の新設項目はみんな連携を主体とした項目である。主旨は理解するが「会員みんなが関われる」ことでは無いように思え、今後の在宅診療の活用にバリアーが敷かれた感がある。

 治療を主体とした訪問診療に行くと難しく考えず、気軽に患家に赴き、患者さんと親しく話でもしながらケアをする視点が訪問の原点だと考えたらどうだろうか。張りきりすぎて介護保険の二の舞にならないように、大事に気長に取りかかろう。決して軽率にいっているわけではなく口腔ケアは難しい側面を持っており、奥が深く周辺には医師、薬剤師、看護師、ケアマネ等関連職種がいるので、話が通じない事のないように十分なる自己研修が必要だと言っている、と理解していただきたい。

 これは、在宅歯科診療のキーワードが情報共有と連携であるからであり、歯科医の最も苦手とするところである。まず最低限の資本投下をして、衛生士共々外に出る勇気を持たないと、この在宅診療は身につかないと思う。

デンタルタイムス21 Online JUST Opinion  市ヶ谷隆雲
http://www.independent.co.jp/dt21/column.html

これに関連してヒョーロン・ニュースからの記事の抜粋。

    日歯総研が在宅歯科医療研修用の教材を作成

 4月の診療報酬改定では在宅療養支援歯科診療所が新たに位置付けられ,その要件として“研修を受けた歯科医師がいること”が挙げられている.その研修用教材作成について打ち合わせが行われ,日本歯科総合研究機構の在宅歯科医療推進チームのメンバーのほか,他職種として日本プライマリ・ケア学会,救急医,薬剤師,看護師,栄養士などが参加した.現在,編集作業中であり,3月にはテキストが完成する見込み.
 なお,厚労省より研修の内容については未だ示されておらず,3月中に研修を修了することは難しいことが予想される.そこで「6月までに研修を受講すれば,4月まで遡って算定できることになると漏れ聞こえている」(箱崎守雄日本歯科総合研究機構長)とのことである.


http://www.hyoron.co.jp/index.html?=top.html#Anchor-11481

新会長さま、この辺の所に留意しつつ、宜しくお願いします。