日歯メールマガジン[No.055 08/05/19]

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1》コラム<テイク・オフ>
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■歯科領域からの糖尿病対策への取り組みについて
 日本歯科医師会医療管理・税務担当常務理事 高木 幹正

 近年、口腔疾患と全身疾患との関係が立証されつつある中、糖尿病と歯周病
が相互に関連することが明らかになってきた。

 日歯も、国民の健康づくりのため、生活習慣病、特に糖尿病対策を積極的に
取り組む必要があるとの認識から、平成17年2月に設立された「日本糖尿病対
策推進会議」に平成19年8月から正式に参画した。

 糖尿病対策推進会議は、都道府県単位でも順次設立されているため、未参画
都道府県歯科医師会には、医師会等と連携し都道府県レベルの推進会議に参
画いただくよう要請している。

 糖尿病対策としては、日歯は地域医療における医療連携、チーム医療への基
盤づくりにもなることを見据え、日本糖尿病協会と連携し「日本糖尿病協会歯
科医師登録医制度」を昨年創設した。

 本制度は、必要に応じて、糖尿病・歯周病を罹患している患者さんに対し、
同協会を通じて「日本糖尿病協会登録医・療養指導医」の紹介などを行うもの
で、糖尿病・歯周病の改善に務め、医科歯科連携を相互に図ることを目指して
いる。

 登録方法は同協会のホームページ(http://www.nittokyo.or.jp/)に案内さ
れているので、未登録の方は是非登録していただきたい。

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2》JDAウィークリー
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■歯科単独の口腔保健法制定に着手
 日歯、臨時記者会見

 日歯は5月13日、臨時記者会見を開催し、歯科単独での口腔保健法(仮称、
以下同)の制定に向けた打合せ会を立ち上げ、日歯、日歯連盟、石井みどり
議院議員が合同で検討していくことを明らかにした。

 会見では、大久保会長が口腔保健法制定に着手する理由とその意気込みを披
露。「口腔と全身の健康とを関連させた、歯科単独での法律の制定のために日
歯としての考え方を提示したい。単なる理念法に終わることなく、いずれは例
えば、健診など、予算の伴ったものにし、歯科だけでなく国民にも大きな意義
のある法律にしていきたい」とした。

■メタボ対策として歯周病予防の重要性説く
 2008年歯の健康シンポジウム

 2008年歯の健康シンポジウム「歯周病に潜む、全身の健康トラブル―口腔ケ
アでメタボリック対策―」が5月10日(土)、都内のよみうりホールで開催さ
れ、生憎の空模様にもかかわらず会場満員となる1000名を超す来場者が訪れた。

 シンポジウムでは、基調講演を行った宮崎滋・東京逓信病院内科部長、西村
英紀・広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授の両氏の他、本田佳子・女子栄
養大学栄養学部教授、女優の松居一代さんが登壇。メタボリックシンドローム
歯周病の密接な関係を示すとともに、日常からよく噛み、正しい歯磨きを行
う習慣を身につけることの重要性などを呼びかけた。

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緊急記者会見をしたわりに、日歯のメルマガでは扱いがアッサリしています。

他の歯科関係のメディアでの報道も合わせてご覧ください。

口腔保険法(仮称)、日歯本格的取り組み

続いて、「日歯連盟広報」の5月15日号より

コラム

昭和36年に国民皆医療保険制度が成立して以来、今日に至っております。
その間、医師、歯科医師、そして多くの医療関係者の献身的な努力により、他国と比較しても医療水準は高く、WHOの総合評価でも1位になり、世界の中で最長寿国になりました。

しかし、2001年の小泉構造改革以来、経済が低迷し、更に2006年に医療費抑制を過去最大に実行するとの号令下に「医療制度改革関連法」が可決されました。
これは医療費や年金、社会福祉費といった社会保障関係費を5年間で1・6兆円も削減するという過酷なもので、以来医療と福祉の現場は混乱と崩壊が更に進み今日に至りました。

政府は急速な高齢化に伴う医療費の増大を抑制するため、国民には負担増を、我々には診療報酬の削減を強いてました。しかし、この状態が長く続けば、医療の質の低下と福祉の荒廃が更に進み、社会不安が増大して秩序破壊が生じることも懸念されます。

さらに、「経済財政諮問会議」「規制改革会議」を作り、「規制撤廃」「官から民へ」と主張してきました。
その中で民間医療保険導入の話も出てきました。診療報酬は総医療費、保険点数という統制経済の中で運用されていますが、そこに市場原理、競争原理の民間医療保険が参入すれば「企業利益」「株主配当」が最優先され、お金の有無が医療にも大きな格差を生じて国民の不満と怒りを招くでしょう。
そして医療サービスの向上、価格の下落、患者の選択の幅が広がり有利になるという彼等の主張は根底から崩れ去るでしょう。

アメリカの医療現状を見ると、企業利益最優先のため保険に加入出来ない医療難民といわれる人が約5000万人、また保険に入っていても正当な医療を受けることが出来ない人が多数おり社会不安の一因にもなっております。

この事実は「テロより怖い医療問題」という映画「SiCKO(シッコ)」の中で如実に表現され、そこで医師は保険会社の利益を出す「管理医療」体制の下で働かされ、貧者は医療を受けられず路上に放置されておりました。
国民の生命の安心と安全を支える社会保障を守ることは、「平時の安全保障」だと元日医会長の坪井栄孝先生が言われたとおり、教育、医療、福祉こそ国の安定に直結する重要な柱だと考えます。

健康と安心、安全を願う国民にそれぞれのライフステージに合った良質な歯科医療を提供するには、医療経営の安定、生活基盤の確立は不可欠であり、そこに強い政治力が必要なことは自明の理であります。
4月の診療報酬改定で石井みどり参議院議員を先頭に日歯、日歯連盟が結束して対処し、当初提示されたマイナス改定の厚い壁を破り、満足はできないものの0・42%のプラス改定を得たことは団結の成果だと思います。

今後も職域代表の石井議員を歯科界が団結して支え、2年後には更にもう1人の議員を国会に送り、「食べること、噛むこと、話すこと=健康で生きること」を目標に努力してきた我々の意志を国政の場で反映出来ればと考えます。法案を作るのも変えるのも政治です。

                                 理事 中里 迪彦