日歯メールマガジン[No.057 08/06/02]より

■役員勉強会の課題等確認
 地区制は次回方針決定へ
 第2回理事会

 第2回理事会が5月29日、新歯科医師会館で開催され、6月4日、5日の両日に新歯科医師会館で行う役員合宿勉強会の課題やスケジュール等を確認した。勉強会では、「あるべき歯科医療」と「あるべき歯科保健」の2つの課題に取り組む。

 地区制については、現行の10地区制から7地区制への変更の是非も含めて、次回理事会で方針を決定することとした。

 また、日歯として食育に関する目標値を設定。食べ方に関心のある国民の割合を80%にすることや、よく噛んで食べることが肥満の防止になることを知っている国民の割合を100%にすることなど、計9項目で目標値を設定した。

歯科医師需給問題を巡って
 大久保満男会長コラム「会意」

 歯科医師需給問題への対応が叫ばれてから長い年月が経っているにもかかわらず、課題解決への出口が見えてこないことに、執行部としても大きな危機感と責任を感じております。

 そうした中、歯科界の訴えが実って、厚労大臣と文科大臣との間で、歯科医師過剰対策としての確認書が一昨年8月末に交わされたことは、本問題が政治的な課題であることを明確にしたと、我々は考えています。

 そうは言っても、最大の課題である歯科大学・歯学部教育、特に私立歯科大学・歯学部の定員削減は、誰にも命令権はなく、歯科医師会と私立歯科大学・歯学部との主張は、互いの見解を述べ合うだけで、もう何年も両者がテーブルに着くこともなく、今に至っています。

 しかし、私は最近になって、このような事態に新たな問題が生じたと考えています。それは歯科大学・歯学部の受験者数の大幅な減少で、特に今年はその傾向が著しく、衝撃的なことは、ある地方の歯科大学では受験者数が定員に達しなかった。また別の一校では、無理に定員を満たせば学生の質を確保できないと、あえて定員割れの決断をしたと聞いておりますが、私はこの決断に心から敬意を表しています。

 これは、従来の数を問題とした需給問題に、「歯科医師の質」という新たな課題が加わったことを意味します。言い換えれば、「歯科医師過剰」という歯科医師会の危機感に、「学生の質の低下」という歯科大学・歯学部の危機感を重ね合わせられる状況が生まれてきたということです。

 かつて歯科大学・歯学部は定員削減による大学経営の危機を、我々は歯科医師過剰による歯科界の危機を言い合い、そのベクトルは異なった方向を向いていました。それが今や、歯科という世界の地盤沈下、いやそれどころか崩壊へのシナリオさえもが見える地点まで来ており、両者がその危機感を共有しなければ生き残れないと考え始めたと言えるでしょう。

 この問題に関する危機感の共有という私の発言を、ある業界紙のコラムで、「大久保会長は呑気だ」と批判されましたが、良く勉強しているなと時に感心するこの欄の筆者にしては、問題の深刻さを把握しておられないと思います。

 明治維新において、日本が独立国として近代化できたのは、ひとえに対立する薩長と徳川の両者が、これ以上の内乱が続けば、日本が欧米の植民地となるという危機感を共有したからでした。違う考えを持つもの同士が立場を超えて、危機感を共有することがいかに困難であるか。しかしそれが実現できた時、事態を根本から変える大きな力となることを、我々はここに改めて確認し、歯科界の復権に向けて、全ての関係者が渾身の力を振り絞って事に当たるべきであり、今後歯科大学・歯学部との積極的な話し合いの場を持ちたいと考えています。

ここで書かれた業界紙のコラムとはこれのことでしょうか?

JUST Opinion
http://www.independent.co.jp/dt21/column20080425.html

歯科医師国家試験に思う
〜本格的合格者削減策が始まるか〜

                     市ヶ谷隆雲

 歯科医師供給過剰問題は30数年前から検討されてきた。平成7年には新規参入の最小限20%削減化が提言され、削減率は19.7%に達した。その後、更なる10%削減を大学に求めたが、歯科医師会の定年制が一度も正式な協議にかからない状態に対し、大学側も譲らず平行線を辿ってきた。過去、日歯は国試の難易度を上げることが重要課題との認識を示してきたが「削減策とは考えていない」と述べ、妙案は示せず開店休業状態が続いてきた。しかし平成17年、川崎厚労相と小坂文科相は、歯科医師養成数削減問題で「確認書」を取り交わし、「歯科医師国家試験の合格基準を引き上げる」との合意から、懸案だった両大臣が同じ土俵に上がることになり、国試難易度による合格者削減策が現実味を帯びてきた。

 本年3月27日発表の第101回歯科医師国家試験の合格率は68.9%と過去10年で最低の結果となったが、厳しい合格者削減策は次回国試から本格的になり、更に合格率が下がることが予想される。国家試験の医科合格率の90.6%と比較すると異常な状態といえる。合格率の足を大きく引っぱっているのは既卒者であり、新卒者の合格率と比較すると実態が見えてくる。即ち、新卒者の合格率は78.3%。最低は47.78%、最高は91.2%で、この実態は既に資格試験の状態ではなく、如何に質の向上を確保すべきかの観点から『選抜・競争試験的様相』を呈している。

 私立の大学には、募集人員に満たなかったところや、合格率60%台以下が5校あり、私立全校の約3割に当たる。また、私立大学の新卒受験者数が6学年在校生の数と乖離していると思われるところが数校あり、ここは恐らく国試を受験させない何らかの処置を講じていると考えられ、この数も今後増加していくものと思われる。既に国試浪人が1026名に達し、この数も今後増え続けると大きな社会問題に発展する恐れがある。今年の既卒者の合格率は私立大学で約38%であり、その6割程度が歯科医師になれないまま別の道を探さざるをえないことになるとしたら、単に個人の資質の問題だけでなく、大学の責任といわれかねない面もある。

 試験結果にみる学校間の格差は著しく、「大学として教育をしているのかどうか」が問題とされよう。このような大学は、社会的使命を果たしておらず、歯科医療の質の低下をもたらす大きな要因と考えられる。多くの大学では、最終学年は国試対策に追われ、本来の大学教育が忘れられている。質の向上が最大のテーマになっている現在、このような実態が存在していることは、今後の受験生の減少化と優秀な学生が減少することによる歯科医療の将来に大きな暗雲をもたらし、歯科界が奈落の底に引き込まれていく気がしてならない。そして、その責任は大学にあり、それを放置している国にある。大久保日歯会長の云う「危機感を歯科大学と共有する」という呑気なことでなく、積極的に統廃合に対する具体策を発していかないと、利益中心主義とも考えられる大学と共倒れになり兼ねない。

 極論だろうが、歯科大学関係者の中には「優秀な学生が多ければ4年で良い」とまでいう者もあり、後の2年間を現在勉強するべき新領域への拡大が出来る可能性がある。生き残る大学は、真剣に大学再建策を実行した数校になるかもしれない。しかし、その対策を今なされなければ、勝者の道を歩めないだろう。今の歯科大学の学費は余りにも高過ぎ、優秀な学生が来ないのは当たり前だ。そこには、金を払える者を集めても教育は出来ず、国試どころではないという実態があり、大学関係者の歯科医学教育に対する高邁な理念を感じることはできない。


以前に大久保会長が業界紙のある記事にご立腹と言う噂を聞きましたが、ご本人が書いているのだから、噂は本当だったんですね・・・それに対する反論が今回の「会意」と言うことなのでしょう。

今年度の診療報酬改定の検証について、日医は4月速報値と言っても、かなり詳しく述べているし、元になる資料も合わせて公表した。対して日歯は、記者会見で「4月速報値で前年同月比1.5%アップ」とさらりと言及したことしか会員には伝わってこない。こう言ったことも「呑気」と言われればカチンと来るのだろうか?
全国には、診療報酬などのモニターが300人以上いるわけだから、日医同様、データを早急にまとめることですね。もうやっておられるとは思いますが。日医は4,5,6月のデータを集計して、新たに分析結果を公表するそうです。

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学費800万円安くします 大阪歯科大 職員賃金カットで捻出

http://www.sankei-kansai.com/01_syakai/sya053002.htm

 大阪歯科大学大阪府枚方市)は29日、平成21年度の入学者から6年間の学費を総額約4000万から約3200万円まで800万円引き下げると発表した。これにより6年後の大学側の学費収入は約10億円の減収となるが、大学側は「大幅な賃金カットで臨む。生き残りをかけたギリギリの経営判断」としている。

 同大はこれまで、全国に17校ある私立歯科大の中で2番目に学費が高かった。大学側によると、この高額さが原因で、最近は入学辞退者が全入学者数の3分の1にのぼっていた。また、18歳人口の減少で、平成8年度には527人だった入学志願者が昨年は半分以下の256人に落ち込んでいたという。

 学費の減額は、こうした状況に歯止めをかけるための措置で、減収分の10億円は職員の給与を平均7・8%、退職金を平均15・7%減額して補填(てん)するという。


(2008/05/30 8:20)