日歯メールマガジン[No.057 08/06/02]より

■役員勉強会の課題等確認
 地区制は次回方針決定へ
 第2回理事会

 第2回理事会が5月29日、新歯科医師会館で開催され、6月4日、5日の両日に新歯科医師会館で行う役員合宿勉強会の課題やスケジュール等を確認した。勉強会では、「あるべき歯科医療」と「あるべき歯科保健」の2つの課題に取り組む。

 地区制については、現行の10地区制から7地区制への変更の是非も含めて、次回理事会で方針を決定することとした。

 また、日歯として食育に関する目標値を設定。食べ方に関心のある国民の割合を80%にすることや、よく噛んで食べることが肥満の防止になることを知っている国民の割合を100%にすることなど、計9項目で目標値を設定した。

歯科医師需給問題を巡って
 大久保満男会長コラム「会意」

 歯科医師需給問題への対応が叫ばれてから長い年月が経っているにもかかわらず、課題解決への出口が見えてこないことに、執行部としても大きな危機感と責任を感じております。

 そうした中、歯科界の訴えが実って、厚労大臣と文科大臣との間で、歯科医師過剰対策としての確認書が一昨年8月末に交わされたことは、本問題が政治的な課題であることを明確にしたと、我々は考えています。

 そうは言っても、最大の課題である歯科大学・歯学部教育、特に私立歯科大学・歯学部の定員削減は、誰にも命令権はなく、歯科医師会と私立歯科大学・歯学部との主張は、互いの見解を述べ合うだけで、もう何年も両者がテーブルに着くこともなく、今に至っています。

 しかし、私は最近になって、このような事態に新たな問題が生じたと考えています。それは歯科大学・歯学部の受験者数の大幅な減少で、特に今年はその傾向が著しく、衝撃的なことは、ある地方の歯科大学では受験者数が定員に達しなかった。また別の一校では、無理に定員を満たせば学生の質を確保できないと、あえて定員割れの決断をしたと聞いておりますが、私はこの決断に心から敬意を表しています。

 これは、従来の数を問題とした需給問題に、「歯科医師の質」という新たな課題が加わったことを意味します。言い換えれば、「歯科医師過剰」という歯科医師会の危機感に、「学生の質の低下」という歯科大学・歯学部の危機感を重ね合わせられる状況が生まれてきたということです。

 かつて歯科大学・歯学部は定員削減による大学経営の危機を、我々は歯科医師過剰による歯科界の危機を言い合い、そのベクトルは異なった方向を向いていました。それが今や、歯科という世界の地盤沈下、いやそれどころか崩壊へのシナリオさえもが見える地点まで来ており、両者がその危機感を共有しなければ生き残れないと考え始めたと言えるでしょう。

 この問題に関する危機感の共有という私の発言を、ある業界紙のコラムで、「大久保会長は呑気だ」と批判されましたが、良く勉強しているなと時に感心するこの欄の筆者にしては、問題の深刻さを把握しておられないと思います。

 明治維新において、日本が独立国として近代化できたのは、ひとえに対立する薩長と徳川の両者が、これ以上の内乱が続けば、日本が欧米の植民地となるという危機感を共有したからでした。違う考えを持つもの同士が立場を超えて、危機感を共有することがいかに困難であるか。しかしそれが実現できた時、事態を根本から変える大きな力となることを、我々はここに改めて確認し、歯科界の復権に向けて、全ての関係者が渾身の力を振り絞って事に当たるべきであり、今後歯科大学・歯学部との積極的な話し合いの場を持ちたいと考えています。

ここで書かれた業界紙のコラムとはこれのことでしょうか?

JUST Opinion
http://www.independent.co.jp/dt21/column20080425.html

歯科医師国家試験に思う
〜本格的合格者削減策が始まるか〜

                     市ヶ谷隆雲

 歯科医師供給過剰問題は30数年前から検討されてきた。平成7年には新規参入の最小限20%削減化が提言され、削減率は19.7%に達した。その後、更なる10%削減を大学に求めたが、歯科医師会の定年制が一度も正式な協議にかからない状態に対し、大学側も譲らず平行線を辿ってきた。過去、日歯は国試の難易度を上げることが重要課題との認識を示してきたが「削減策とは考えていない」と述べ、妙案は示せず開店休業状態が続いてきた。しかし平成17年、川崎厚労相と小坂文科相は、歯科医師養成数削減問題で「確認書」を取り交わし、「歯科医師国家試験の合格基準を引き上げる」との合意から、懸案だった両大臣が同じ土俵に上がることになり、国試難易度による合格者削減策が現実味を帯びてきた。

 本年3月27日発表の第101回歯科医師国家試験の合格率は68.9%と過去10年で最低の結果となったが、厳しい合格者削減策は次回国試から本格的になり、更に合格率が下がることが予想される。国家試験の医科合格率の90.6%と比較すると異常な状態といえる。合格率の足を大きく引っぱっているのは既卒者であり、新卒者の合格率と比較すると実態が見えてくる。即ち、新卒者の合格率は78.3%。最低は47.78%、最高は91.2%で、この実態は既に資格試験の状態ではなく、如何に質の向上を確保すべきかの観点から『選抜・競争試験的様相』を呈している。

 私立の大学には、募集人員に満たなかったところや、合格率60%台以下が5校あり、私立全校の約3割に当たる。また、私立大学の新卒受験者数が6学年在校生の数と乖離していると思われるところが数校あり、ここは恐らく国試を受験させない何らかの処置を講じていると考えられ、この数も今後増加していくものと思われる。既に国試浪人が1026名に達し、この数も今後増え続けると大きな社会問題に発展する恐れがある。今年の既卒者の合格率は私立大学で約38%であり、その6割程度が歯科医師になれないまま別の道を探さざるをえないことになるとしたら、単に個人の資質の問題だけでなく、大学の責任といわれかねない面もある。

 試験結果にみる学校間の格差は著しく、「大学として教育をしているのかどうか」が問題とされよう。このような大学は、社会的使命を果たしておらず、歯科医療の質の低下をもたらす大きな要因と考えられる。多くの大学では、最終学年は国試対策に追われ、本来の大学教育が忘れられている。質の向上が最大のテーマになっている現在、このような実態が存在していることは、今後の受験生の減少化と優秀な学生が減少することによる歯科医療の将来に大きな暗雲をもたらし、歯科界が奈落の底に引き込まれていく気がしてならない。そして、その責任は大学にあり、それを放置している国にある。大久保日歯会長の云う「危機感を歯科大学と共有する」という呑気なことでなく、積極的に統廃合に対する具体策を発していかないと、利益中心主義とも考えられる大学と共倒れになり兼ねない。

 極論だろうが、歯科大学関係者の中には「優秀な学生が多ければ4年で良い」とまでいう者もあり、後の2年間を現在勉強するべき新領域への拡大が出来る可能性がある。生き残る大学は、真剣に大学再建策を実行した数校になるかもしれない。しかし、その対策を今なされなければ、勝者の道を歩めないだろう。今の歯科大学の学費は余りにも高過ぎ、優秀な学生が来ないのは当たり前だ。そこには、金を払える者を集めても教育は出来ず、国試どころではないという実態があり、大学関係者の歯科医学教育に対する高邁な理念を感じることはできない。


以前に大久保会長が業界紙のある記事にご立腹と言う噂を聞きましたが、ご本人が書いているのだから、噂は本当だったんですね・・・それに対する反論が今回の「会意」と言うことなのでしょう。

今年度の診療報酬改定の検証について、日医は4月速報値と言っても、かなり詳しく述べているし、元になる資料も合わせて公表した。対して日歯は、記者会見で「4月速報値で前年同月比1.5%アップ」とさらりと言及したことしか会員には伝わってこない。こう言ったことも「呑気」と言われればカチンと来るのだろうか?
全国には、診療報酬などのモニターが300人以上いるわけだから、日医同様、データを早急にまとめることですね。もうやっておられるとは思いますが。日医は4,5,6月のデータを集計して、新たに分析結果を公表するそうです。

<関連記事>


学費800万円安くします 大阪歯科大 職員賃金カットで捻出

http://www.sankei-kansai.com/01_syakai/sya053002.htm

 大阪歯科大学大阪府枚方市)は29日、平成21年度の入学者から6年間の学費を総額約4000万から約3200万円まで800万円引き下げると発表した。これにより6年後の大学側の学費収入は約10億円の減収となるが、大学側は「大幅な賃金カットで臨む。生き残りをかけたギリギリの経営判断」としている。

 同大はこれまで、全国に17校ある私立歯科大の中で2番目に学費が高かった。大学側によると、この高額さが原因で、最近は入学辞退者が全入学者数の3分の1にのぼっていた。また、18歳人口の減少で、平成8年度には527人だった入学志願者が昨年は半分以下の256人に落ち込んでいたという。

 学費の減額は、こうした状況に歯止めをかけるための措置で、減収分の10億円は職員の給与を平均7・8%、退職金を平均15・7%減額して補填(てん)するという。


(2008/05/30 8:20)

5月29日日歯定例記者会見より

<近藤勝洪副会長報告>

今日の理事会では,レセプト電算化のマスター,記録条件仕様,標準仕様などについて協議し了承された.6月の初めに再度協議し,来年1月から確認試験をはじめ,3月ごろから稼動させたい.
日本総研に依頼したが,数社の一次選定が終わった.1社も依頼に応じないのではと懸念されたが,日本歯科医師会の内部で検討し,レセコンソフト開発のため,企業からヒアリングをする予定である.最大の問題は開発費用であり,これを含めて今後検討していく.6月中旬に結論が出ると思う.
今年4月から一定の条件を満たす400床以上の病院は,レセプト電算化処理が義務化された.821ある病院のうち738病院がオンライン化され,89.9%の率となった.400床未満は29.0%,医科診療所はいくらか増えて17.4%になった.歯科はまだゼロである.この資料は,国会議員の先生方に歯科診療所の現状を示す資料として作成したものである.

会見の詳細は以下のリンクを参照。


食育に関する目標値の設定―日本歯科医師会定例会見より

それにしても、昨日の会見が今日には見ることが出来る。
IT化による情報伝達の高速化には今更ながら驚きます。

「社会保険方式」と「税方式」支持するのはどっち?

YAHOO!ニュースの「意識調査」より
http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/quiz/quizvotes.php?qp=1&poll_id=2215&typeFlag=1

[医療全般]「社会保険方式」と「税方式」支持するのはどっち?

基礎年金を、現在の「税+保険料」でまかなう「社会保険方式」から、税だけでまかなう「全額税方式」に変えると消費税率は最大18%になる試算だそう。「社会保険方式」と「全額税方式」、どちらの方式を支持する?
(実施期間:2008年5月20日〜2008年5月30日)

  • 社会保険方式
  • 全額税方式
  • 別の方式
  • 年金制度自体がいらない
  • わからない


回答せずに結果を見る

関連トピックス: 年金問題



社会保障費の圧縮は続けたほうがいい?

政府は2007年度から5年間、社会保障費の伸びを毎年2200億円圧縮する方針を掲げています。「医療が崩壊する」と撤回を求める声もありますが、圧縮は続けたほうがいいと思う?
(実施期間:2008年5月26日〜2008年6月6日)

  • 続けたほうがいい
  • 撤回したほうがいい
  • その他


回答せずに結果を見る

関連トピックス: 国家財政

                                                                                                                                        • -

そんでもって、桜井参議院議員のブログから

医療制度改革

2008.05.22 Thursday
 後期高齢者医療制度廃止法案を提出することになった。私も発議者となり、答弁に立つことになった。本当は6月の一週目は、EUの議員団との会議があるため、ヨーロッパに行く予定だったのだが、急遽取りやめにした。

 社会保障制度は所得の再分配機能を持ち合わせており、年齢によって規定されるものではない。この原則から考えれば、75歳以上の高齢者だけの保険を作るのは論理矛盾している。

 これまでの医療制度の枠組みは、大企業のサラリーマンが加入している組合健保、中小企業のサラリーマンが加入している政管健保、公務員が加入している共済保険、そして自営業者や高齢者が加入している国民健康保険に分けられる。

 これまでは、現役世代の加入している保険からの拠出金で、老人保健や各々の健康保険の財政規律を何とか保てたのだが、高齢者の増加や景気の悪化による給料の減少、そして国家財政の悪化による税金の投入額の削減により、老人保健や政管健保の財政が悪化してきた。
 
 その問題を解決するために登場してきたのが、後期高齢者医療保険制度である。この保険制度の大きな問題は、社会保障制度の大原則である、所得の再分配という機能を十分に発揮できないことにある。また、税金の投入等で財政調整を行なっては来たものの、保険料率や付加給付制度等で、各々の医療保険間にも差が出てきた。

 そこで私は、後期高齢者医療制度を廃止し、医療保険を一元化、要するに全ての人が同じ保険に入る制度にするべきであると考えている。一元化すれば、所得の再分配機能を十分発揮できるだけではなく、制度そのものがシンプルになるので、社会保険庁等を解体できるメリットもある。

 私の考えは、医療保険税として徴収する。保険料率も一元化されるので、不公平は解消される。この制度になると、これまで保険料率で優遇されていた人たちも応分の負担を求めることになるので、1兆円以上の増収になると推計している。

 一方、現在の制度であれば、月1万5千円しか年金を受け取っていない人からも保険料を徴収していたのだが、1兆円以上の増収となるので、年金を月6万6千円以下しか受け取っていない人の保険料を無料にすることができる。

 税として国が集めたお金は各都道府県に基金を作り、上限を定めてそこに分配する。例えば宮城県に1兆円分配する。宮城県のその年の医療費が8千億円ですんだ場合、その残りの2千億円は県が自由に使える。一方、医療費が1兆1千億かかった場合には、超過した1千億円は県が負担する。そのことにより、保険者機能を働かせ、無駄な医療費を削減しようと考えている。

 いずれにせよ、今回の制度は問題が山積している。この問題を解決するためには、保険制度の抜本的改革が必要である。既得権益があり、容易な事ではないと分かっているが、国民の皆さんが安心して医療を受けられる制度を作っていきたいと考えている。


http://policy.dr-sakurai.jp/?eid=874163



日歯メールマガジン[No.056 08/05/26]より

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1》コラム<テイク・オフ>
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■「Eシステム」テイク・オフ
 日本歯科医師会学術・生涯研修・国際渉外担当常務理事 江里口 彰

 平成20・21年度日歯生涯研修事業「Eシステム」の運用開始から2カ月が経過
した。

 5/14現在の利用者数は会員4,537名、都道府県歯を始めとする研修会主催者
は1,165団体で、「ICカード」の利用者数は3万296人(延べタッチ回数)とな
っている。

 問い合わせの多くはIDとパスワードに関するものである。この対応として
『日歯雑誌5月号』に「Eシステムへのログイン方法について」を掲載し、スム
ーズな「Eシステム」の利用をお願いしている。

 また、運用開始後の実例を踏まえて、「EシステムおよびICカード用研修受
付ソフト利用に関するFAQ」を作成し、日歯ホームページに掲出している。

 「Eシステム」会員用のメニュー「研修教材を探す」内には豊富な研修教材
があり、最新の日歯生涯研修ライブラリー(平成19年度制作)も映像配信して
いる。

 会員の先生方の「Eシステム」のご活用に期待するばかりである。

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2》JDAウィークリー
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■歯科の窮状や健康寿命延伸への寄与主張
 国家戦略本部・社会保障PT

 自民党の国家戦略本部「安心できる社会保障プロジェクトチーム(PT)」の
第13回会合が5月16日、自民党本部で開催され、大久保満男会長が歯科の窮状
を訴えるとともに、「生活を支える医療」である歯科が健康寿命の延伸に寄与で
きることなどを主張。生涯を通して歯科の立場から国民の健康・生活を支援し
ていくための「口腔保健法(仮称)」の制定に理解を求めた。

 PTは今国会会期中を目途に中間取りまとめを行う予定。


後期高齢者終末期相談支援料 実態検証の上で改善
 中医協総会・検証部会

 中医協総会が5月21日、厚労省内で開催され、平成20年度診療報酬改定で導
入された後期高齢者医療の診療報酬に係る見直し、特に歯科も関わる「後期高
齢者終末期相談支援料」などの是非について協議し、実態を検証した上で改善
を図ることで大筋合意した。次回以降も引き続き検討していく。

 「後期高齢者終末期相談支援料」については、総会終了後の診療報酬改定結
果検証部会で、特別調査項目として今年度に実施状況や満足度などを調査する
ことが了承されたが、政府与党は、6月上旬に後期高齢者医療制度の運用見直
し案をまとめる方針を打ち出している。

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白河歯科医師会でも5月例会時に「Eシステム」の説明が行われたようですが、利用法はお分かり頂けたでしょうか?慣れれば簡単。利用出来るコンテンツはかなり多いのです。1990年(だったか?)からの日歯関係の雑誌のコンテンツがすべてアーカイブされています。巨大なデータ・ベースでもあります。
検索が「タイトル」だけでなく全てのテキストから抽出されるようになればベストなのですが・・・
PDFファイルと言っても画像系で透明テキストが貼られていないものもあり、その辺がネックになっているのか?

噛むことからのヘルスプロモーション

http://espelana.blog109.fc2.com/blog-entry-462.html

河邊清治博士生誕100年記念特別講演から

「噛むことからのヘルスプロモーション」

東京歯科大学名誉教授 奥田克爾氏

私は河邊臨床教室の酒井会長とは同級であり,今回の講演を頼まれた.これからの歯科はヘルスプロモーションをやっていかなければならない.
あるメーカーに依頼され,「オーラルヘルスと全身の健康」という冊子の製作に関わった.この冊子を見た日本医学会の会長が,「このような冊子こそ,歯科医師より医師が読まなければならない.医師は歯科医師と連携しながら,患者さんに対応していかなければならない」と述べていた.
河邊清治先生に学んだのは45年前である.研鑽をつむこと:Moving forwardが大切であり,色々なことをやりなさい,と言われ,私なりにやってきた.プロとしての自覚をもて,我々は神が創った臓器を再生させることができるのだ,と講義で教わった.

作家の遠藤周作が花と時計:「変るものと変らぬもの」,という随筆のなかで,

なぜ歯学だけ別扱い? 医学に素人の私だが,いささか腑におちないことがあるので,読者の方から教えを頂きたい.それは医学部のなかに歯学科がないことである.
歯科の勉強をするには大学の医学部ではできない.したがって医学部とは別の歯科の学校や大学にはいらねばならない.だから厳密にいうと歯科の先生は口と歯以外の臓器について治療もしくは診療する資格がない.
それを初めて教えられた時(ウカツにもわたしはこの区別をまったく知らなかった)びっくりしてしまった.
口といってもその範囲はひろい.歯もあれば歯ぐきもあるし,鼻とつながっている部分もある.

以上のように遠藤周作は書いている.

また,日経メディカルオンラインで「医師も歯科受診を勧めてみませんか」と内科医師の細田正則氏が語りかけている.

「私の専門は消化器内科ですが,内視鏡検査などで患者さんの口のなかを診ることが多いからでしょうか,以前から患者さんの口腔衛生について関心を持っています」
「内科疾患を鑑別する際に,口腔内をチェックすることで,ヒントを得られるというケースもあるわけです.また,歯周病に関連する炎症性サイトカインと糖尿病との関連,あるいまメタボリックシンドロームとの関連なども研究されています」

 以上が内科医師の見識である.

スケーラーは,いつ,だれがつくったのか?
二千数百年前に医学の父のヒポクラテスがつくった.ヒポクラテスは口のなかに病気があると健康が破綻することを知ったのである.当時は細菌学の知識はまったくなかった.しかし,歯石がたくさんあると病気になるので,歯石をスケーラーでとった.
80年前にプライスという歯科医師が,メイヨクリニックの医師たちと口の病気が全身の病気に関連するという研究をし,2,000ページにおよぶ膨大な本を書いた.その本を東京歯科大学に寄贈してくれた.
私は非常に恥ずかしい思いをした.80年前に贈られた本を最初に読んだのは私であり,最近のことである.これを知ったら河邊先生にどなられたと思う.内容を読めば読むほど,すごい本である.

歯周病で全身の色々な病気が起こると指摘している.口に病気があるとアレルギーが起きる.口の病気と皮膚病が関係する.80年前にメタボリックシンドロームとの関連も書いている.さらに免疫との関連も書いている.
口腔の疾患が,リウマチ,腎臓病などのも関わると指摘されている.現在,噛むことから脳刺激の意義やヘルスプロモーションなどが明らかになりだした.

歯垢とはいいたくない.垢(あか)ではなく細菌の塊である.この塊は複数の細菌群から構成されているバイオフィルムという細菌の塊である.細菌は集団となって層状になっているので抗菌剤では無力化(抵抗性になる)できない.機械的に取り除かなければならない.

アメリカは2080運動である.20歳での齲蝕ゼロを80%にという運動である.日本の8020推進運動は,健康な歯を残さなければ意味がない.歯は残っているが歯周病があれば,その内毒素が血流へ進入する.心内膜炎になるし,炎性が動脈硬化の形成に関わる.産科器官への歯周病細菌の直接感染もある.

唾液には抗菌作用はない.口腔ケアがインフルエンザの感染を抑える.歯磨きか? 健康破綻か? 予防と治療の重要性には,新たな政策が不可欠である.歯科医師会の役割,歯科大の役割がある.

レーザーの保険適用拡大等を要望へ

http://espelana.blog109.fc2.com/blog-entry-456.html

補綴物の維持管理期間を2年から3年以上に

東京歯科保険医協会が記者懇談会を開く

東京保険医協会が5月16日,記者懇談会を開いた.はじめに中川勝洋会長が挨拶し,「月1回発行の東京歯科保険医新聞のほかに,リアルタイムでF−NEXをFAXで発行している.第99号では,東京社会保険事務局に5月2日に基準の届出受理状況(概算)を聞いたので,その内容を掲載した」として,以下のとおり診療報酬改定関連項目について実状を報告し,感想を述べた.

<中川会長挨拶>

今回の診療報酬改定では,器材を揃えれば,30点が請求できる歯科外来診療環境体制加算(歯科用吸引装置)の受理が15件にすぎなかった.我々診療所側の水準と行政が考えている水準とには,かなりギャップがある.厚生労働省の担当者は当初,全国で2〜3%くらいと考え予算組みをしていたが,問い合わせが多く困惑しているような状況である.
医療の安全については,6月21日の当協会の総会記念講演では,医療安全をめぐる今日的課題と題して,大山正夫氏(東京都医療推進協会委員)に患者の立場で話をしてもらう予定である.
また,在宅療養支援診療所の届出受理36件については,研修が義務づけられている.今まで1年以上続けて訪問診療をやったことがあることが条件であり,行政の思いどおりには進んでいないという感じがしている.
今回の診療報酬改定については,1カ月の経過で点数をみると,診療のスタイルでバラつきが出ているようであるが,5%以上のプラスも出ている.しかし削って詰めるという部分ではマイナスであり,2極分化もある.
歯周組織再生誘導術の届出受理530件については,我々が予測していた以上に申請が多かったと思う.これが定着すれば次の新規技術の導入では,プラスになると思う.齲蝕歯無痛的窩洞形成加算は60件であり,レーザーで削ったあとにコンポジットを接着させようとしても接着しない.この加算は意味がない.レーザーが歯周病にも適用できる方向に早くなってほしい.適用の拡大厚生労働省に要望したい.
厚生労働省は,来年度計画しているのは,補綴物の維持管理に関する調査であり,補綴物の維持管理期間を2年から3年以上に延ばせるかを検討するようである.接着剤等が進歩しているので,十分維持できる.取れないと考えているようであり,注意をしていきたい.

補綴物の維持管理料はそのままで、期間だけを延長するつもりなのだろうか?
確かに歯科の診療報酬の中で補綴、歯冠修復の占める割合は50%近い。絞れば医療費削減に効果があると言うわけだろうが、その後ろにいる技工士さんたちのことは考えない?今年度の全国の技工士学校の入学状況、技工士さんの若年層の離職率の高さ、そんなの関係ない?技工物は海外に出せば安い?他の業種もそんな感じで国内の従事者を潰して行ったんですよね。産業の基盤を他国に依存しすぎることは「国家」の正しい姿なのかな?

福島県保険医協会から「海外技工物に関するアンケート調査」が来ていました。

海外歯科技工物に関するアンケート

上のリンクをクリックして200%拡大くらいで見ると良いようです。

日歯メールマガジン[No.055 08/05/19]

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1》コラム<テイク・オフ>
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■歯科領域からの糖尿病対策への取り組みについて
 日本歯科医師会医療管理・税務担当常務理事 高木 幹正

 近年、口腔疾患と全身疾患との関係が立証されつつある中、糖尿病と歯周病
が相互に関連することが明らかになってきた。

 日歯も、国民の健康づくりのため、生活習慣病、特に糖尿病対策を積極的に
取り組む必要があるとの認識から、平成17年2月に設立された「日本糖尿病対
策推進会議」に平成19年8月から正式に参画した。

 糖尿病対策推進会議は、都道府県単位でも順次設立されているため、未参画
都道府県歯科医師会には、医師会等と連携し都道府県レベルの推進会議に参
画いただくよう要請している。

 糖尿病対策としては、日歯は地域医療における医療連携、チーム医療への基
盤づくりにもなることを見据え、日本糖尿病協会と連携し「日本糖尿病協会歯
科医師登録医制度」を昨年創設した。

 本制度は、必要に応じて、糖尿病・歯周病を罹患している患者さんに対し、
同協会を通じて「日本糖尿病協会登録医・療養指導医」の紹介などを行うもの
で、糖尿病・歯周病の改善に務め、医科歯科連携を相互に図ることを目指して
いる。

 登録方法は同協会のホームページ(http://www.nittokyo.or.jp/)に案内さ
れているので、未登録の方は是非登録していただきたい。

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2》JDAウィークリー
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■歯科単独の口腔保健法制定に着手
 日歯、臨時記者会見

 日歯は5月13日、臨時記者会見を開催し、歯科単独での口腔保健法(仮称、
以下同)の制定に向けた打合せ会を立ち上げ、日歯、日歯連盟、石井みどり
議院議員が合同で検討していくことを明らかにした。

 会見では、大久保会長が口腔保健法制定に着手する理由とその意気込みを披
露。「口腔と全身の健康とを関連させた、歯科単独での法律の制定のために日
歯としての考え方を提示したい。単なる理念法に終わることなく、いずれは例
えば、健診など、予算の伴ったものにし、歯科だけでなく国民にも大きな意義
のある法律にしていきたい」とした。

■メタボ対策として歯周病予防の重要性説く
 2008年歯の健康シンポジウム

 2008年歯の健康シンポジウム「歯周病に潜む、全身の健康トラブル―口腔ケ
アでメタボリック対策―」が5月10日(土)、都内のよみうりホールで開催さ
れ、生憎の空模様にもかかわらず会場満員となる1000名を超す来場者が訪れた。

 シンポジウムでは、基調講演を行った宮崎滋・東京逓信病院内科部長、西村
英紀・広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授の両氏の他、本田佳子・女子栄
養大学栄養学部教授、女優の松居一代さんが登壇。メタボリックシンドローム
歯周病の密接な関係を示すとともに、日常からよく噛み、正しい歯磨きを行
う習慣を身につけることの重要性などを呼びかけた。

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緊急記者会見をしたわりに、日歯のメルマガでは扱いがアッサリしています。

他の歯科関係のメディアでの報道も合わせてご覧ください。

口腔保険法(仮称)、日歯本格的取り組み

続いて、「日歯連盟広報」の5月15日号より

コラム

昭和36年に国民皆医療保険制度が成立して以来、今日に至っております。
その間、医師、歯科医師、そして多くの医療関係者の献身的な努力により、他国と比較しても医療水準は高く、WHOの総合評価でも1位になり、世界の中で最長寿国になりました。

しかし、2001年の小泉構造改革以来、経済が低迷し、更に2006年に医療費抑制を過去最大に実行するとの号令下に「医療制度改革関連法」が可決されました。
これは医療費や年金、社会福祉費といった社会保障関係費を5年間で1・6兆円も削減するという過酷なもので、以来医療と福祉の現場は混乱と崩壊が更に進み今日に至りました。

政府は急速な高齢化に伴う医療費の増大を抑制するため、国民には負担増を、我々には診療報酬の削減を強いてました。しかし、この状態が長く続けば、医療の質の低下と福祉の荒廃が更に進み、社会不安が増大して秩序破壊が生じることも懸念されます。

さらに、「経済財政諮問会議」「規制改革会議」を作り、「規制撤廃」「官から民へ」と主張してきました。
その中で民間医療保険導入の話も出てきました。診療報酬は総医療費、保険点数という統制経済の中で運用されていますが、そこに市場原理、競争原理の民間医療保険が参入すれば「企業利益」「株主配当」が最優先され、お金の有無が医療にも大きな格差を生じて国民の不満と怒りを招くでしょう。
そして医療サービスの向上、価格の下落、患者の選択の幅が広がり有利になるという彼等の主張は根底から崩れ去るでしょう。

アメリカの医療現状を見ると、企業利益最優先のため保険に加入出来ない医療難民といわれる人が約5000万人、また保険に入っていても正当な医療を受けることが出来ない人が多数おり社会不安の一因にもなっております。

この事実は「テロより怖い医療問題」という映画「SiCKO(シッコ)」の中で如実に表現され、そこで医師は保険会社の利益を出す「管理医療」体制の下で働かされ、貧者は医療を受けられず路上に放置されておりました。
国民の生命の安心と安全を支える社会保障を守ることは、「平時の安全保障」だと元日医会長の坪井栄孝先生が言われたとおり、教育、医療、福祉こそ国の安定に直結する重要な柱だと考えます。

健康と安心、安全を願う国民にそれぞれのライフステージに合った良質な歯科医療を提供するには、医療経営の安定、生活基盤の確立は不可欠であり、そこに強い政治力が必要なことは自明の理であります。
4月の診療報酬改定で石井みどり参議院議員を先頭に日歯、日歯連盟が結束して対処し、当初提示されたマイナス改定の厚い壁を破り、満足はできないものの0・42%のプラス改定を得たことは団結の成果だと思います。

今後も職域代表の石井議員を歯科界が団結して支え、2年後には更にもう1人の議員を国会に送り、「食べること、噛むこと、話すこと=健康で生きること」を目標に努力してきた我々の意志を国政の場で反映出来ればと考えます。法案を作るのも変えるのも政治です。

                                 理事 中里 迪彦